第4回 さっぽろ腎臓病市民講座
2024年12月7日(土)
札幌市東区民センター
第4回さっぽろ腎臓病市民講座はJR札幌病院副院長で腎臓内科部長の吉田英明先生に講演をいただき、多数の皆様がお聴きになりました。
さっぽろ腎臓病市民講座のご紹介と「タバコと腎臓」
医療法人 ネフロハス 理事長
さっぽろ腎臓病市民講座 会員代表 向 博也先生
まず、会員代表で医療法人ネフロハスの理事長の 向 博也から、さっぽろ腎臓病市民講座発足の経緯、会員施設、目的についてご紹介いたしました。内容は第一回の記事をご覧ください。
続いて、「タバコと腎臓」というテーマで、喫煙の害、腎臓への害、禁煙の方法についてお話ししました。
① 喫煙の害
・1日1箱を50年間吸うとほぼ確実に総入れ歯になります。
・非喫煙者を1としたときの喫煙者の疾患のリスクは、白内障は2、心筋梗塞は男3.6、女2.9、糖尿病は1.5、
メタボリック症候群は2.5、胃潰瘍は3.5、胃がんは1.5、大腿骨骨折は2、脳卒中は2.8、口腔/咽頭がん
は2.5、喉頭がんは5.5、食道がんは男3.5、女1.9、肺がん/肺炎/慢性閉塞性肺疾患は3、すい臓がんは1.7、腎がんは1.6、膀胱がんは男5.4、女1.9、子宮がん/妊娠合併症/不妊/低出生体重/乳幼児突然死は2.3。
非喫煙者でも副流煙を吸っているとこれらの疾患のリスクが高まる。
・喫煙女性は非喫煙女性より閉経が約5年早いため、脂質異常や骨粗鬆症が速く進行する。
・喫煙すると皮膚温が2~5℃低下し皮膚のメラニン色素が増える。
・4本の喫煙で1日に必要な量のビタミンCが失われる。
・寿命は1本吸うと6分、1日20本吸うと2時間、それを10年続けると1年縮まる。
・タバコには約250種の有害物質が含まれ、その中にはニトロソアミン、カドミウム、タールなどの発がん
物質がある。
・これらの物質はフィルターを通して喫煙者が吸う主流煙よりも、フィルターを通らない副流煙の方に多く含まれている。
② 腎臓への害
・非喫煙者を1としたときの喫煙者のリスクは、CKDの発症が男は1.26、女は1.4、CKDの悪化は男が1.3、
女は1.4。
・腎機能の低下速度は喫煙者の方が非喫煙者よりも速く、喫煙量が多いほど速い。
禁煙後は非喫煙者と同じ速さになる。
・日本腎臓学会では、すでに腎臓病があったり腎機能が低下している人、および将来CKDになる危険因子
(肥満、蛋白尿や血尿、高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症/痛風、メタボリック症候群、膠原病、慢性感染症、解熱鎮痛剤常用者、CKD家族歴、急性腎不全の既往)がある人、は禁煙を推奨している。
・電子タバコや加熱式タバコが従来のタバコに比べて害が少ないかどうかは、まだ信頼できるデータがないためわからない。今のところ同じと考えるべき。
③ 禁煙の方法
・まずは家族や身近な人の協力を得て自ら禁煙を試みる。
・うまくいかなければ「禁煙外来」を利用する。
腎臓に良いこと・悪いこと
JR札幌病院 副院長 腎臓内科部長 吉田 英昭先生
吉田先生は、腎臓内科を受診する患者様からよく聞く疑問や不安を紹介し、それに答える形で講演をされました。
主な内容は以下のとおりです。
腎臓の大切さ
・「かんじんかなめ」は肝心要または肝腎要と書く。肝臓、心臓、腎臓が重要であることが古くから認識されていた。
・近年、腎臓が心臓、肝臓、肺、脳、腸、骨と協調して様々な働きをしていることが解明されており、
腎臓は単独としての働きのほか、全身の健康にも重要な役割を担っている。
CKDになると透析になるのか?
「透析になるんですか?」「透析はしたくありません、死んだほうがましです」と、よく言われますが…
・CKD患者は虚血性心疾患や心不全を併発していることが多く、透析導入前に死亡することが多い。
・「人生100年時代」を目指すうえで日常生活を制限なく送れる「健康寿命」を延ばす必要がある。
北海道の死因(標準化死亡比)は男女とも腎不全が1位であり、CKDへの対策が重要。
透析にならないために何かできませんか?
・CKDの原因の多くは肥満、高血圧、耐糖能異常/糖尿病、脂質異常、塩分過剰摂取、喫煙などの「生活習慣(病)」であり、透析になる患者の原因疾患も2/3が生活習慣病であるので、これらの管理が重要。
・例えば、「メタボリック症候群」ではその構成因子を多く持つほどCKD発症リスクは上昇する。
・「高血圧」の診断基準に達する前でも血圧が高い方がCKDの割合が増加している。
・尿蛋白の量が多い人ほど透析に至るリスクが高い。
腎臓に良いこと
・腎臓が悪くない人(CKDステージ2まで)は
① 野菜や果物でカリウムを摂取する(高血圧や脚の攣りの予防)
② 塩分無添加のナッツ類を摂取する(マグネシウムなどのミネラルによる高血圧や動脈硬化の予防)
③ サーモンやマグロなどオメガ-3脂肪酸を含む魚を摂取する(尿蛋白や腎機能低下の予防)
④ 1日1.5~2Lの水分を摂る
・CKDステージ3になったら積極的に食事療法を行う。
① 減塩(食塩摂取量が多い人ほど尿蛋白は増える)
② 蛋白制限
③ カリウムやリンの制限
④ 適正エネルギー摂取
具体的には
① 炭水化物(主食)を減らして同等のカロリーや蛋白質を副食で摂取する
② 朝食を抜かない、寝る前2時間は食べない
サプリメントは摂取すべきですか?
・医薬品と同じ基準により科学的に効果が実証されているものはなく、中には有害なものもあるのでお勧め
しない。
アルコール(飲酒)は?
・一日1合飲んでいると心血管疾患リスクが低い、との報告がある。勧奨はしない。
コーヒーは?
・飲んでいる人の方が腎臓病の発症リスクが低い、心臓病や腎臓病による死亡率が低い、などの報告があるが、
カフェインの効果なのか、コーヒーに含まれるその他の成分の効果なのかなど、詳細は不明。
カリウム制限が必要な人はインスタントよりもカリウムが少ないドリップを選択すべき。
喫煙は?
・本日の最初の講演でも触れられていた通り、喫煙していると腎臓は速く悪くなる。
CKD以外の疾患も含めて、喫煙を続けているとどんな治療をしても治療効果は十分発揮されない。
注意すべき薬剤
・CKDの人は痛み止め、解熱剤、骨粗鬆症治療薬、抗菌薬、胃炎/胃潰瘍の薬、一部の糖尿病薬などには注意が
必要。処方する医師が腎臓専門医でない場合は、自分はCKDであることを伝るとよい。